先に述べたビット列の違いから、量
子コンピュータと従来のものとでは回路の点においてどのような違いが生じるのでしょうか。
従来のコンピュータの電子回路は、主に次の3つの基本素子でしばしば表現されます。
ここで重要なのは、2つのビットが入ってきた時に、1つあるいは2つのビットを出力するということです。これは、ANDやORの回路の結果
から、元の2つのビットを復元することはできないということを示しています。すなわち、従来のコンピュータの電子回路は可逆性を持ちません。
これらの基本素子を複数用いることで複雑な回路を生成することができます。正に現在使用されているコンピュータには、このような回路が組み込まれています。
複雑な処理系:基本素子AND,OR,NOTの組み合わせ
量子コンピュータにおいてはどうでしょうか。量
子コンピュータにも同様にANDやOR、NOTといった回路があります。しかし、量
子コンピュータにおいて、それらが必ずしも最小の単位ではありません。量
子コンピュータでは、従来のコンピュータにおけるANDやOR、NOTを表すことのできるさらに小さい単位
のCN(Controlled−NOT)という基本素子が考えられています。
量子コンピュータの基本素子:CN(controlled-NOT)
| Controlled-NOTの行列表現:4次のユニタリ行列 |
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CNは、制御側の量
子ビットの状態が|1〉に限り、作用するビットを反転させるというものです。動作は次の様になっています。
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IN
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OUT
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CONTROL
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TARGET
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CONTROL
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TARGET
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0
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0
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0
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0
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1
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1
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1
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0
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1
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1
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1
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0
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これ一つで、従来のコンピュータと同様な回路を表現可能なことがわかっています。
量子コンピュータのビット列は行列で表現できると同様に、回路も行列で表現することができます。CNの場合は4次の正方行列になります。CNの回路図からも分かるように2量
子ビットに作用するので、行列の一辺の大きさが2量子ビット分、すなわち2の2乗分必要になります。そして、入力ビット列に対して回路が作用するというのは、単純な行列計算となっています。出てきた解が出力ビットです。上記の図CNの場合は、次の様になります。
| 入力量
子ビットは|01〉なので |
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| 出力量
子ビットも同様に|01〉なので |
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これより出力量子ビットと入力量
子ビットの数が等しいことに気付きます。量子コンピュータの場合、従来のものと異なり必ず入力した分と同じビット数の量
子ビットが出力されます。しかも、この出力結果を同じ回路に通すと、最初に入力した量
子ビットと同じものが出てくるという可逆の性質を備えています。これは、行列の数式を見れば明らかです。
また、量子コンピュータは、CNによって作り出されるANDやORやNOTだけでなく、様々な行列によって様々な動作をする回路を作り出すことができます。それによって、従来のコンピュータで不可能だった優れた性能を発揮することができます。しかし、量
子コンピュータの回路になるためには、行列は任意のもので良いというわけではなく、次のような条件を満たしている必要があります。
列及び行の成分の個数が2のn乗個であるようなユニタリ行列
ここで、nは任意の自然数です。ユニタリというのは、行列における数学的な性質の一つです。このことから、量
子ビットに対して作用する素子のことをユニタリ作用素と言います。
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